モリオの不定期なblog

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テレビシリーズのその後を描く作品として、本作はどうだったのか?<仮面ライダークローズ・感想・ネタバレ>

 1年間という長い時間をかけて紡がれた『仮面ライダービルド』。その物語の末に訪れた世界で新たに紡がれる物語『仮面ライダークローズ』。1年間『ビルド』を追っていた者として、『クローズ』を見届けない訳にはいきません。という訳で、早速映画館ヘ馳せ参じてきました。

 

本作はビルドこと戦兎とクローズこと万丈だけでなく、グリスことカズミンやローグこと幻さん、美空、紗羽さんが登場しました。ファンの期待に応える最高の後日談、仮面ライダークローズ=万丈の物語でした…

 

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…と、言いたかったです。

 

ここより先は、罵詈雑言とまでは言わずとも、多少なりとも本作に対する不平不満と共に本作に関するネタバレが書かれています。本作を未見の方はもちろんの事、鑑賞済みでも本作を気に入っているという方はご注意ください。

 

 

 

 まず本作において良かった点は、アクションシーンです。これは前作『平成ジェネレーションズFOREVER』でも感じていた事なのですが、山口恭平監督の演出する格闘と必殺技は、個人的に非常に好きです。

 

mori2-motoa.hatenablog.com

 

 

1対多数の見せ方は、文字通り上手に捌いており見事です。そして必殺技ではCGに実際の爆発や炎、水を組み合わせる事による相乗効果で迫力のある映像になっていました。CGによって爆発や炎の迫力が増し、爆発や炎によってCGの実在感が増す。必殺技のアッパーカットからの連続技は最高でした。また、キックもよくある貫通ではなく、ちゃんと相手を吹っ飛ばしたのも個人的には好きです。

 

どちらかではなくCGと本物を両方使う事で、両方の質を向上する。特撮に限った話ではありませんが、こういう映像表現が非常に好きだし本作でも観れた事は非常に嬉しかったです。

 

 

 

 

 

 

 さて、ここからは気に入らなかった点です。本作において評価する上で非常に重要な点が、テレビシリーズで戦兎たちが成し遂げた「エボルトを倒し新しい世界を創造した事に意味があったのか。」という点です。その点において、本作は正直最悪でした。

 

 

 

 テレビシリーズでは、エボルト底知れない力を前に戦兎たちの力も話の進行と共にインフレしていきます。それでもなお、エボルトの撃破は叶わない。だからこそ世界を作り変えるという通常では考えられない方法に手を出してしまいます。その代償というべきか、イレギュラーな存在である戦兎と万丈を除いた全ての人が、エボルトに関する記憶ひいては皆と出会った記憶を全て失いました。

 

主人公2人以外の世界全員が成し遂げた事を覚えていない、共に戦った仲間たちも覚えていないというラストがあるからこそ、戦兎と万丈の選択に、カズミンと幻さんの決死の戦いに、彼らの明日を作らんとする歩みに意義と重みが生まれたのだと思います。

 

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 本作では、その歩みを完全に否定したと言っても良い。戦いの終わった新しい世界で仲間たちが再び集う事に対して喜びを感じない訳ではありません。戦兎と万丈の2人以外の仲間たちが、自分たちの目指した世界を獲得した事実を認識できた。視聴者として、その事が決して嫌だという訳ではありません。

 

しかしどうしても、「それで良いのか?」という思いが拭えない。そんなにあっさりと記憶を取り戻してしまっても良かったのか?彼らが成した事はそんなに軽い物だったのか?そんな疑念が払えない以上、純粋の仲間たちの再会が喜べません。せめて、思い出したり再開するのは物語のラストに持ってきて欲しかった。

 

 

 

 そんな思いをより強めてしまったのが、エボルトの復活です。自らの身を滅ぼす程の肉体の強化を行なっても遂には正攻法で倒す事ができず、世界を作り替えるという手段をとった。それほどの苦労を経ても、これもまたあっさりと復活してしまう。

 

 

 

更なる問題はラスト。復活してしまったエボルトを野放しのままであった事です。しかも、力を宇宙で蓄えてから地球に帰って来る気満々で宇宙に旅立っていきます。先ほど述べた「意味があったのか。」という問いに対して完璧なNOを突き付けられました。

 

 

 

 

百歩譲ってエボルト復活までは許すとしても、野放しにし同じ事が繰り返される可能性を残したラストは絶対に許せません。地球がエボルトによって破壊される、その結末を避ける為に戦兎たちは命をかけて戦っていたはず。

 

せめて、地球がエボルトによって滅ぼされない事を保証する展開にして欲しかった。例えば、万丈がクローズエボルになる過程で、万丈とエボルトが互いを切っても切り離せない状態になる。そうする事で、万丈はおろか地球を滅ぼす事が不可能になる。

 

そうすれば、まだ納得できました。(それでも、他の星の事は良いのか…と思いますが。)

 

 

 

 他にも気になる事は、本作で初登場する馬渕由衣の存在です。正直、必要不可欠だと思うほど物語の盛り上がりに貢献したとは思えませんし、彼女の描写に費やした尺をエボルトに費やして欲しかったです。

 

特にラストの彼女の言動は理解不能です。万丈が戦う姿を見て彼女が見直す展開は、まだ理解できます。しかしそれはマイナス∞から0かプラス10くらいの感情変化であって、プラス∞への感情変化ではないはずです。ただでさえ60分という短い時間の中で感情の変化が極端に感じてしまいました。

 

 

 

 本編のラストに心掴まれ『平成ジェネレーションズForever』をビルド最高の後日談だと感じたからこそ、本作の物語を手放しに歓迎する事ができませんでした。

 

 最後に、本作で一番笑えたのはエボルトの声を演じていらっしゃる金尾哲夫さんの登場です。