モリオの不定期なblog

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本作を形作る要素、それらの工夫のない置き方に観客が裏切られる<MIB(メン・イン・ブラック) インターナショナル・感想>

 本シリーズはテレビ放送していた時に鑑賞した程度で、映画館で鑑賞するのは本作が初めてです。「地球は、ド派手に裏切られる。」惹かれるようでそんなに惹かれないキャッチコピーで宣伝されている本作ですが、本作の設定や使用されるガジェットに魅力を感じていたので鑑賞を決意。ムビチケも事前に購入し準備万端の状態で公開日を迎え6月17日、劇場へ行ってきました。

 

人生初のMIBの劇場体験、裏切られたのは地球ではなく私でした。使用されるガジェットから本作の結末に至るまで感じることのできないサプライズ。興味を持続させられない描写の一つ一つに満足する事ができませんでした。

 

Men In Black: International (Original Motion Picture Score)

 

Men In Black: International (Original Motion Picture Score)

Men In Black: International (Original Motion Picture Score)

 

 

 

 

(以下、『MIB インターナショナル』本編のネタバレに加えて『プロメア』の内容にも触れているのでご注意ください。)

 

 

 

 

 

観客は、地味に裏切られる。

 本作のような実在しない組織を描いた作品において重要なポイントだと感じている事は、使われているガジェットや身につけている物ひいてはその組織に憧れを感じられるか、という事です。

 

日本の特撮だと『ウルトラマンガイア』のXIGや『ウルトラマンダイナ』のスーパーガッツ、ハリウッド作品だと『パシフィック・リム』のPPDCや『キングスマン』の…キングスマンなど、様々な組織が描かれてきました。どの作品でも様々な場面で多種多様なガジェットを主人公たちが使用していました。

 

自分も使ってみたい、身につけてみたい、乗ってみたい。

 

仮にその組織にじぶんが入るのなら、どの部門・部隊に属するのか。そこで自分はどんな役割で、どんな道具を用いて活躍をするのか。上記で述べた作品は、そんな想像を駆り立ててくれてました。

 

憧れという言葉に集約する事ができるこれらの感情や思考が、それを駆使する登場人物たちの活躍をより一層輝かせる。本作を鑑賞する前でも、そのポイントに対して非常に大きな期待がありました。予告編で登場していた車から次々に武器を取り出す場面はその期待に応えてくれると思っていました。しかし本作は、そういった憧れを抱かせてはくれず、期待を裏切られました。

 

 

 

興味をそそられない武器の登場

 車の様々な場所に格納されている武器、それらを次々に取り出して敵に応戦するシチュエーション自体は非常にワクワクします。しかし一つ一つの武器の取り出し方が、何か物足りない。その武器に、それを使う主人公たちに憧れを感じませんでした。

 (理想)

MIB「ここから武器を取り出せるぞ!」

 

自分「凄え!」

 

MIB「実はここにも武器はあるぞ。」

 

自分「マジかぁあああ!!!…もしかして、ここにも?」

 

MIB「あるぞ。」

 

自分「うおおおおお!こんな武器が!」

 

MIB「ちなみにサイドミラーにも。」

 

自分「うひょおおおおお!!!」

 

何が言いたいのかというと、武器の登場の一つ一つにサプライズが無かったんです。車に収納される武器自体がサプライズの塊であるはずのに、見せ方にタメが無ければ興味を引く演出になっていなかった。武器の出し方がジャジャーン!って驚かせるものではなく、スーーーーーっと出す感じ。

 (実際)

MIB「こちらに武器が収納されています。」

 

自分「凄え!」

 

MIB「あと、こことそこ、あとはここにも武器が収納されています。」

 

自分「………凄いですね。」

 

まるでベルトコンベアに乗せられた武器が次々とあっという間に過ぎて行く感覚。ベルトコンベアが速いだけでなく、そこにはカーテンやライトを使った演出もありません。武器を一つ一つをじっくり見せてくれる訳でもなければ、次々と武器を取り出していく面白さを感じさせてくれる訳でもありません。だから、一つ一つの武器が印象に残らないし、興味も駆り立てられない。結果として、憧れを感じるには至らないんです。

 

 

義務的に感じる要素の配置

 武器の使用場面で感じた事は、本作全体に対しても言う事ができると思っています。それは、本作を構成している要素の配置に工夫が感じられなかった事です。世界の危機でありながらも深刻になりすぎない登場人物たちの会話、それを感じさせるユーモアなやりとり。そして本作特有の乗り物やガジェットの使用。それらの殆どに、工夫が感じられなかった。特に登場人物たちの会話は、面白い感じの事を言っているだけで笑いを誘うものでは特にありませんでした。

 

唯一少し笑えたのは、エージェントHを演じているクリス・ヘムズワースが自身が『アベンジャーズ』シリーズで演じたソーのセルフパロディのシーン。しかし、そのシーンも唐突に行われる為、あまり丁寧とは言えません。本作の描写は適当で良くても(いや、良くないですけど)、他の作品をネタにしたシーンくらいは丁寧に描写して欲しかったですね。クリス・ヘムズワースに失礼。

 

ユーモアになってない会話を含め、要素の配置に工夫を感じられなかった結果どうなるのか?本作を形作る要素の一つ一つが義務に配置されているように感じてしまいました。本作を含めてMIBシリーズは4作品制作されたシリーズです。本作を制作するにあたって、当然シリーズの基本的な要素を本作には入れていると思います。その要素に工夫と面白さ、憧れを感じられないが故に、「メン・イン・ブラックという作品だから。」という制作側の義務的な態度を感じずには入られませんでした。

 

 

 

先の展開が予想できる作劇

 工夫を感じられなかったのは、終盤においても同様でした。演じている役者などメタ的な部分から考えても、リーアム・ニーソン演じるハイTが裏切るのは大体予想がつきました。しかし黒幕が予想がつきやすいからといって、それが作品にとって必ずしもマイナスになる訳ではありません。展開が予想できるという点において共通していると『プロメア』という作品があります。この作品は展開の予想がつきやすい構造でありながら、満足度が非常に高い作品でした。

 

本作との違いはなんなのかというと、登場人物たちの関係性の構築です。終盤におけるエージェントHとハイTとのやりとりでは、彼らの関係性が垣間見えます。しかし、そこに至る過程でその関係性を見せてくれてなかったが故に、ハイTが裏切っていると分かった事実に対して衝撃は感じられません。

 

対して『プロメア』もクレイの裏切りは容易でした。(というか、予告で明らかに…)では、主人公であるガロがクレイに対して如何に恩を感じて信頼しているのか描いていました。そしてその上で、クレイの裏切りに涙するガロを見せる。そうする事で、観客はガロとクレイの関係性を詳しく知らなくとも、その裏切りの衝撃の大きさを感じる事ができるんです。

 

『プロメア』はその他にも、映像面などを含め様々な要素が「続きを見たい、その先の展開を見たい。」と思わせれらました。上記でサプライズが無かったと書きましたが、なにもビックリさせられたり衝撃的な展開を用意してほしい訳ではありません。その先の展開を見たいと思わせる、視覚的興味の持続をさせだけの刺激を与えてくれる体験をさせて欲しかったんです。

 

 

 

 裏切られた期待、唯一残ったもの

 ビジュアルやストーリーなど本作を形作る様々な要素 その殆どが工夫無く配置された事で、淡白で憧れも抱かせない決して面白いとは言い難い作品に仕上がっていました。鑑賞前に抱いていた期待は裏切られました。もし次回作があるのなら、是非ガジェットを魅力的に見せてくれる作品に仕上げて欲しいと思いました。

 

最後までMIBに憧れを抱かせる事の無かった本作。しかし唯一私が真似をしたいと思わせてくれた物がありました。それは車から降りた時にジャケットのボタンを閉める事です。