モリオの不定期なblog

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真ん中に豪速球で投げられた「ゴジラ映画」。そんな作品を目の当たりにして感じた、戸惑いと反省。<ゴジラ キングオブモンスターズ・感想>

 65年という自分が生きた時間よりも倍以上の長い歴史があるゴジラ。30作品以上が製作された中で様々な作風の作品が誕生してきました。時には海の向こうで製作され、近年では着ぐるみや模型の枠組みを飛び越え実写でありながらフルCGであったり、アニメーションで描いた作品も製作されました。

 

そんな中でゴジラに対して深い愛情とリスペクトを持っているマイケル・ドハティさんが最新作である『GODZILLA KING OF THE MONSTERS』の監督を担当されるという事で、どのような作品となって生み出されるのか非常に楽しみにしていました。

 

鑑賞してみた結果は、昨年まで3部作で展開されていたアニメーション版『GODZILLA』で期待していた部分を充足してくれたと同時に、ハリウッド発でこのようなゴジラ映画が生み出された事に戸惑いと喜びの両方を感じる体験となりました。

 

The Art of Godzilla: King of the Monsters

The Art of Godzilla: King of the Monsters

The Art of Godzilla: King of the Monsters

 

 

 

 アニゴジ に期待していたもの

 アニメーション版『GODZILLA』で期待していた事は何かと言うと「箍が外れて事で一線を超え、取り返しのつかなくなる程の戦闘」です。ゴジラ作品を全て鑑賞しているわけではなく平成VSシリーズを中心に鑑賞していた為、全てのゴジラ作品に当てはまるかは分かりません。しかし少なくとも、これまで鑑賞したゴジラ作品においては戦闘の被害は「取り返しのつく範疇」に収まっていました。どれだけ建物が破壊されようとも、あくまで一つの都市で発生した戦闘であり国が滅んだり、ましてや人類が地球の外へ避難するほどの被害が発生した事は無かったかと思います。

 

そんな中で、アニメーション版『GODZILLA』は既に一度人類は敗北し地球をはなれた為、取り返しがつくか否かという段階はとうに過ぎています。建物が壊れる事を気にしなくても良い程戦いのフィールドが広く思う存分戦う事ができるシチュエーションが整っています。そんな土台が整っているおかげか、ゴジラ自身も歴代で最大のサイズに設定されていました。そんなゴジラと戦うメカゴジラも、一個体という枠を超えて街自体がメカゴジラという今までにないスケール感の設定がされていました。

 

そんな設定であるにも関わらず、戦闘はそのスケール感に見合ったものでは無かった事が個人的な不満点でした。極端な事をいうと、打った光線が地球の外からでも視認できたり一度吹っ飛ばされたら海まで飛ぶのは当たり前くらいの戦闘を見せて欲しかったです。内容に関しては好きな部分はあるし考察も行なったりするくらいには気に入っている部分はありますが、戦闘に関しては擁護し難いと思っています。

 

mori2-motoa.hatenablog.com

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遠慮が無い戦闘・監督

 アニメーション版『GODZILLA』で見る事ができると期待して見る事ができなかったものが、本作『GODZILLA KING OF THE MONSTERS』では見る事ができました。世界中で怪獣が出現し一都市が重大な被害を被るだけには止まらず、世界規模にまで自体は拡大しました。怪獣が移動するだけでも甚大な被害が発生する中で、ゴジラをはじめラドンキングギドラモスラが戦いを繰り広げます。簡潔に言うと「遠慮が無い戦闘」が繰り広げられているシーンの数々に気持ちの高ぶりを感じた事は間違いありません。

 

遠慮が無いのは怪獣だけでありません。音楽を始め、おおよそオマージュという枠に収まらない、日本のゴジラを意識した映像や音楽の表現の数々。ゴジラをはじめとする怪獣たちへのリスペクトの精神、そんな思いを一つの作品の中で全て出し切ろうという遠慮の無さ。それらの表現を映画館で浴びる中で、もはや「日本のゴジラ映画」なのか「ハリウッドのゴジラ映画」なのか脳が混乱する程。

 

こんな映画がありうるのか、こんな映画が作られていいのか。監督があれほど『ゴジラ』シリーズに対して情熱を持っているのなら、もしかすると情熱の全てを出し切った訳ではないのかもしれません。しかし映画という一つの鍋に溢れ出そうになりながらも表面張力で何とか溢れずにいる状態にまで詰め込みながらも、作品(商品)として成立させた。なんと素晴らしい極上鍋なのでしょうか。怪獣に対する情熱と愛は、エンドクレジットにまで及んでいます。そんな映画が海の向こうからやってくる衝撃。かつて『パシフィック・リム』でも感じたものですが、『ゴジラ』という子供の頃から観てきて馴染み深い分、その衝撃はよりダイレクトに伝わってきて戸惑いすら感じました。

 

 

 

 『ハリウッド版ゴジラ』からの昇華

 本作のような『ゴジラ映画』『怪獣映画』がハリウッドから誕生した事に対する戸惑いがあります。しかし本作の誕生は自分にとって、『ハリウッド版ゴジラ』がその括りから外れゴジラシリーズの一部に昇華したように思えました。ゴジラシリーズにおいてハリウッド版は、どこか番外編のような意識で鑑賞していました。しかし本作を経て、ハリウッド版とか日本版とか、そんな事は関係ないと思わされました。どちらも等しく『ゴジラ』なのだと。

 

そもそも、そのような姿勢で見ていた自らの姿勢を反省しつつ、本作に続く『ゴジラ』作品を楽しみに待ちたいと思いました。