モリオの不定期なblog

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馬鹿馬鹿しくも清々しい世界観と役者陣の演技の相乗効果によって成立させた快作<翔んで埼玉・感想>

 予告編の時点で画面から溢れ出るシュールさに「あ、これ絶対面白いやつだ。」思わされた作品が、『翔んで埼玉』です。登場人物の殆どが奇抜な服装に身を包み、埼玉県を初めとする様々な県がディスり合戦を繰り広げる。極め付けは有名人の出身地対決などという訳の分からない戦いと、シュールの塊としか言いようのない映像の数々に、これから観る映画があるのに気を取られてしまう始末。麻生久美子さんが煽り気たっぷりに発する「ぐ・ん・ま」のインパクトは今でも頭から離れません。

 


「チバラキのヤローが!!」映画『翔んで埼玉』大ヒット上映中! 15秒スポット インパクト編

 

しかし、『スパイダーマン:スパイダーバース』や『アリータ:バトルエンジェル』、『劇場版 ウルトラマンR/B』と既に注目していた作品が集中していた為、なかなか鑑賞には至れずにいました。(主にスパイダーマンを複数回鑑賞していた所為ですが。)通常であればこの場合、時間の経過と共に興味が薄れていってしまうものですが、予告編の衝撃が頭から離れる事はありませんでした。という訳で、ようやくというか、遂にというか、行ってきました。

 

「翔んで埼玉」オリジナルサウンドトラック

 

 

 

 埼玉県をはじめとする千葉県、神奈川県、群馬県に住んでいる人たちが知っている「あるあるネタ」で、本作は構成されています。そこに住む方たちは勿論、仕事や大学で住んだり通ったりした経験が一度でもある人は、実際に見た事がある場所が映ったり、一度でも考えたり知人と話した事が語られたりするだけで、「ふふっ」と思わず息が漏れてしまう。

 

では、埼玉県はおろか、関東地方に住んでない人は楽しむ事ができないのかというと、そんな事はありません。そもそも本作は、埼玉県が東京都から迫害を受けているなどという、とんでもない設定。これを地元あるあると自虐でネタに昇華する事でコメディ映画として成立させています。見た事のある看板や建物はありつつも似ても似つかない東京、百年単位もしくは千年単位で時間がズレているとしか思えない埼玉や群馬、過剰としか言えない各地の表現は、「そんな訳あるか。」と思わせるほどに過剰であるがゆえに、決して出身であったり住んでいなくとも楽しめる構成になっています。

 

本作において土地ネタ以上に重要なポイントは、非現実的でシュールな世界観をコメディ映画として成立させている事。そして、そんなトンデモ設定、世界観だからこそ、役者の大げさで芝居掛かった一挙手一投足を違和感なく楽しむ事ができます。めちゃくちゃな日本の中で、大真面目に演じている役者のシュールさが楽しめる事も、大きな魅力だと考えられます。

 

 

 

 本作を成立させているポイントの一つはキャスティングであると思います。一人一人の役者が持つイメージや気品が、訳の分からない事を言ってるキャラクターたちの存在感にある種の説得力を持たせている。キャスティングの妙が、作品に満ち溢れる非現実性やシュールさを成立させています。

 

主人公の麻実麗を演じるガクトさん、埼玉デュークを演じている京本政樹さんにも言える事ですが、同じ日本人とは思えない整った見た目が本作の世界観とキャラクターにマッチしていました。毎年年始に出演している番組『格付けチェック』を想起させる「東京テイスティング」、それに挑戦している麻実麗の姿が様になりすぎていて笑わずにはいられません。

 

阿久津翔を演じている伊勢谷友介さんは、説得力を感じさせる高い演技力はもちろんの事、何よりも丸いレンズのサングラスの似合いっぷりが素晴らしかった。アニメか漫画でこんなキャラクターを見た事があるような気がするほどの似合いっぷり、要チェックです。

 

 

 

 本作は、キャストたちのクソ真面目かつ過剰な演技と馬鹿馬鹿しくてありえない世界観が相乗効果によって映画として成立していました。非常に面白い約2時間楽しむ事ができた作品でした。