モリオの不定期なblog

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限定された空間を用いた作劇、想像力を刺激され魅了された88分間<THE GUILTY/ギルティ・感想・ネタバレ>

 初めは鑑賞する予定どころか、作品の事を知っていませんでした。しかし、Twitterにて『ギルティ』という映画がある事を知りました。「映される場所は一箇所のみ、と限定されれている。」という評判を耳にし気になり始めたタイミングで兄弟に鑑賞を誘われたので、鑑賞してきました。

 


映画『THE GUILTY/ギルティ』予告編

 

想像力を掻き立てる本作の構成に、時に翻弄され、時に魅了される88分になりました。

 

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 (鑑賞後、ヘッドセットが欲しくなってしまいましたね……買ってませんけど。)

 

 

 

(以下、映画本編のネタバレがありますのでご注意ください。)

 

 

 

 

 まず初めに特筆すべき点は、外部から得られる情報が音に限定されている事です。観客の目に映るのは、主人公アスガーとアスガーの居る場所のみ。電話の向こう側の様子はおろか、アスガーの居る場所以外は、本作において一切映される事がありません。当然、事件の当事者たちも、顔を含めてどのような容姿の持ち主なのか、明かされる事はありません。そんな状況が、吐息や足音、物同士が擦れる音など、私たちが普段の生活では意識する事がないような音に対してまで、意識を向けさせます。

 

音という限られた情報から電話の向こうの事件現場などの様子を想像します。では、事件の全体の大まかな把握までもが困難かというと、そうではありません。アスガーは現場に向かう事ができない代わりに、犯人以外の複数の人物にも連絡をとります。そこでのやり取りを通じて、様々な視点から事件を把握する事が可能になります。事件の構造自体の把握は容易であり加えて事件自体も複雑ではない為、観客である自分は電話から聞こえる音に専念する事ができます。

 

 

 

 音に限定して物語が展開されるなら、別に映画でなくても良いのでは?という疑問が出てくるのではないかと思いますが、そんな事はありません。限定された状況において、音と共に観客に提供される情報は主人公のアスガーです。

 

想像に対する答え合わせのように進行していく物語に、安堵したりする事もあれば、意表を突かれる事もあります。その都度、苛ついたり、安堵したりなどアスガーは反応しますが、それは観客も同様です。電話から聞こえる声や音からしか情報を得る事ができないアスガーの状況は観客である私たちと一緒で、まるで一緒に事件解決に臨んでいるかのような錯覚に陥ります。それにより88分の間、映される場所は同じでも臨場感を感じるには十分で飽きる事はありません。

 

また事件とは別に、アスガー自身の事も描かれています。処分を受けて電話番をしている事、人を殺した事で処分を受けた事について時折触れられてます。その事が時には事件の当事者を説得する材料にもなったりします。そうする事で事件に対してだけでなく、事件のみに向いていた興味がアスガーにも向くようになり、事件の真相だけでなく「彼は今何を考えているのか?」という事についても考えさせられます。単に事件解決して終わるのではなく、この事件を通じて彼に何の変化があったのか?彼は最後にどんな決断をしたのか?本作の結末では、そんな事を考えさせられる程にアスガーに対して興味を感じさせられます。

 

88分間の上映時間、常に登場しているアスガーと共に事件解決に動いてるかのように感じさせると同時に、彼自身に対して興味を抱かせています。まるで自分とアスガーが組み始めたばかりのバディかのようで、非常に臨場感がありました。

 

 

 

 本作の評価できるポイントは、「音のみに情報を限定した構成」というアイディア一本勝負の内容で、堅実にその利点を活かしている所にあると考えられます。インパクトのある構成でありながらも、音だけでも分かる事、音だけでは分からない事を明確にし作品に対する臨場感と興味の持続へ結びつけている事が本作も魅力であり評価されている点なのではないかと思います。