公開されている数多くの作品が観客に提供する物は千差万別です。1度目の鑑賞と2度目以降の鑑賞は決して同じ体験を得る事はできない中で、初見の知らない状態こそを核としている作品もあれば、知っている状態であるかを問わずに楽しめる要素を核としている作品もあります。しかし作品の内容を知らない状態、初見の1度目限りでしか得る事のできない体験が存在している事実はどんな作品でも変わりません。
そんな中、1度目の鑑賞でしか得る事のできない体験が作品を問わずに存在しているように、作品の内容を問わずに発生する可能性を持っているものがネタバレです。
SNSによって情報の収集が容易になった一方で、ネタバレに遭遇する可能性も高まりました。新作が公開される度に、ネタバレの可能性を心配し時にはSNSをシャットダウンするなどの対策を迫られる。特に最近では『アベンジャーズ エンドゲーム』で公式からネタバレを行わないように注意喚起を行うなどの事例も見られます。
Marvel Studios' Avengers: Endgame | "Don't Do It"
しかしながら、そんな中でもネタバレは発生してしまいます。それは人によってネタバレ基準が異なっていたりする事などが理由であると考えられます。
そんな中で『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』を2度目の鑑賞に行ってきました。その体験の中で思った事があったので、今回はネタバレに対して自分の考えを書こうと思います。
(作品の内容に触れている部分があるので、未見の方はご注意ください。)
知ってる状態で楽しめる作品だとしても、知らない状態で観たい
ネタバレしても作品の楽しみを損なわないという意見を見た事があります。確かに本作はスパイダーマンのアクションシーン、ピーターをはじめとするキャラクター達の楽しいやり取りなど、知っている状態でも楽しめると思える要素は非常に多いです。その人達の主張するように本作の真相を知っていても楽しむ事が可能なのかもしれません。
だからと言って、それを理由にネタバレが是とする事は認められません。
「知っていても楽しめるか?」という問いに対してYesだとしても、「作品を最大限に楽しめているか?」という問いに対してはYesとは言えません。観る前に知ってしまう事はベストではない。
勿論人の楽しみ方よっては、知ってしまっても良いのかもしれません。でも、知らない状態で1度目の鑑賞を楽しみたい事を望む人がゼロではない以上、「知っていても楽しめる」と言ってネタバレする事が是とされる事は決してない。
作品に、作り手に翻弄されたい
映画を形作る様々な技法やテクニック、それらを考えずにその作品に世界観に没入しキャラクターに感情移入する。その中で、自分が知らず知らずの内に作品に、作り手に、翻弄されたい。
そう、翻弄されたいのだ。視線を誘導されたい。主人公のように勘違いをしたい、騙されたい、驚きたい。作り手の思うように動かされたい。
心臓の鼓動が早くなっていたり、体温が上昇していたり、自分の感情が動かされている事を自覚した時、「作品の思うように動かされている。」「作品に没入していた。」のだと実感できる。その瞬間こそ、映画を鑑賞する上で堪らないくらい至福の瞬間の一つなのです。
そんな楽しみを奪う行為がネタバレなのです。
1度目に翻弄されてこそ、2度目の鑑賞が楽しめる
ネタバレされて知ってしまった時、その瞬間から、知らない状態の初見でしか出来ない楽しみ方は半永久的に不可能になってしまうのです。作品に翻弄される体験が、無くなってしまうんです。失われる体験はそれだけではありません。2度目以降の鑑賞で得る事ができたはずの体験さえも失われてしまいます。
映画の2度目以降の鑑賞は、種明かしをされたマジックを観る事と同じだと思っています。タネを明かされたマジック自体に驚く事は無くても、視線誘導などを含めたマジシャンの数々の技術に驚き感心する。そんな2度目以降の鑑賞は1度目の翻弄された体験があるからこそ、作り手の技術に驚く事ができる。楽しむ事のできなかったマジックの種明かしに、感動も驚きは皆無です。
それぞれの楽しみ方を尊重して
最後に誤解を生まないように述べたい思います。決して「1度目からでも内容を予め知った上で鑑賞したい」という人の楽しみ方を否定するわけではありません。あくまで自分は、映画をそのようにして楽しみたいという話です。
こんな楽しみ方をしたい人間もいるのだと知った上で、ネタバレのしないように尊重して頂けたら何よりです。そして自分自身も、他の人の楽しみ方を尊重し、誤ってネタバレをしてしまわないように気をつけて、今後もSNSとブログで発信を行いたいと思います。