モリオの不定期なblog

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触れただけで割れてしまうガラス瓶に怯え続けた2時間、ハリウッドとは異なる方法論で創られた中編<Fate/stay night [Heaven's feel] Ⅱ・感想>

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 このイラスト、怖いですねぇ。原作未プレイ。2011年に放送された『Fate/Zero』で本シリーズに初めて触れ、それ以来のテレビシリーズを中心にチェックしていました。そんな中で前作「Fate/stay night [Heaven's feel] Ⅰ』を鑑賞。強敵があっさり脱落するなど、全編にわたり不穏な空気に満ちた内容。圧倒的なクオリティの戦闘シーンもさることながら、これまでに鑑賞した作品では感じなかった物語全体の重苦しさに戸惑いながらも魅了されました。

 

そして3部作の内の大きな分岐点となる第2章。不安を感じながらも初日に鑑賞してきました。

 


劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」 Ⅱ.lost butterfly 本予告 | 2019年1月12日(土)全国ロードショー

 

 

 

 戦闘描写は「圧倒的」と思わせた前作をも凌ぐクオリティ、そして不穏な空気を感じさせる物語の暗さも前作以上です。血が沸騰するかと錯覚するほどの高揚感を感じながらも前作以上に重々しい気持ちで劇場をあとにする事になりました。

 

物語は非常に良かったです。3部作の内の第2章は、中弛みする可能性が高いと思います。しかし本作では、観客の不安を徹底的に煽る形で始まりでも終わりでもない物語に、唯一無二の魅力を付与しています。

 

第1章で見え隠れする不安要素、それらが全て間桐桜という1人の少女に集約される瞬間に物語の幕が閉じる。エンドロールの間、先ほどまでの高揚感が嘘だったかと思うほどの寒気を感じていました。果たして、これほど不安や恐怖を抱えたまま幕を閉じた物語があったでしょうか。

 

 

 

 

 本作で素晴らしいと感じた点は、興味の持続ならぬ「恐怖の持続」。序盤では聖杯戦争と無縁であると考えられていた桜が、兄の慎二の策謀をキッカケに聖杯戦争と何らかの関わりがある事を予感させます。

 

桜の口調や表情の変化、影の異常はあれど、決定的な場面は描写されません。しかし、何か悪い方へ向いていると感じさせる描写の積み重ねは、観ている側に否が応でも不安を感じさせます。薄々真相は感づいていながらも、真相を目にする事に恐怖を感じさせます。

 

まるで今にも割れそうなガラス瓶が何度も何度も突かれる様子を見せられている気分です。落ち着く事の出来る瞬間はありません。彼女にとって数少ない心の拠り所である思い出すら侵される。善意と悪意を問わず、その全てが桜という少女を追い込んでいく。物語の進行と戦いの激しさに比例して高まっていく不安、その不安が頂点に達した時、ガラス瓶が倒される瞬間を観客は目撃する。

 

 

 

 本作の物語は、ただひたすら墜ちていきます。3部作の内の第2章の側面が色濃く出ており、完璧に一見さんお断りの構成となっております。シリーズものであっても独立して楽しむ事の出来る作品を作るハリウッドとは完璧に逆行した作劇の本作。

 

邦画における「3部作」と銘打った作品における特徴は、それぞれ一つ一つの話は独立しておらず「起承転結」のどれかが欠けている事。第1章は「結」、第2章は「起、結」、第3章は「起」。その為、第1章だけ鑑賞して第2章以降の鑑賞をやめてしまう事はあれど、第2章や第3章から見始める人はなかなかいません。しかしそんな中、第2章である本作は前作以上の興行成績を記録しています。

 

 

それを可能にした理由は、作品の構成の担保として、シリーズが元来持っている人気は言うまでもありませんが、それに加えてソーシャルゲームの展開による観客の求心力があるからです。一見さんが来なくてもヒットさせる事が出来る程の人気、来年の春まで観客の興味を持続させる求心力、ライトな層も含めた新たな観客を獲得するシリーズの幅広い展開。この3点が、本作をハリウッドでは見る事のない「中編」に出来た理由だと考えられます。

 

 

 

 ハリウッドとは異なる方法論による物語の構成、それを可能にするシリーズの力を感じた一作でした。ツイッターで見る評価や兄弟の話によると、原作ではこの先更に面白い事になっているそう。「約束された勝利の映画」と言ったところでありますが、私自身の最終的な評価がどうなるのかは現時点では分かりません。来年の最終章、どんな結末を迎えるのか非常に楽しみです。