モリオの不定期なblog

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何故マイルスのスイングシーンに感動したのか?今までのスパイダーマンたちには無かった物。<スパイダーバース・感想2>

 ついに公開されました『スパイダーマン:スパイダーバース』。先行上映で既に鑑賞したとはいえ、二度三度の鑑賞では全く熱が冷めず公開初日に再び映画館へ足を運びました。字幕かつIMAX3D限定の公開であった為、今回はDolby-ATMOS(ドルビーアトモス)にて鑑賞しました。

 

今回は3Dではなかった為、IMAX3Dの時と比べ映像による没入感はやや劣るものの、音の立体感から生まれる臨場感はIMAX以上。IMAX3Dの時では聞こえなかった音まで認識でき、改めて鑑賞における音の重要さを実感いたしました。

 

 

 

 

 鑑賞形態についての話はここまでにしておき、今回話したい事は別にあります。同じ作品を複数回鑑賞する場合、回ごとに注目する部分は大なり小なり異なると思います。それによって、魅了されたり驚いたり、感動する部分も変わってくると思います。私は四度目の鑑賞において、マイルスが街中でスイングするシーンで玉の涙を流してしまいました。感動するか否か、感動したとしてもどの部分に対してなのか、それは人によって異なると思います。私がスイングシーンで何故、これほど感動してしまったか?今回は、その理由について考えた事を書きたいと思います。感動した理由を簡潔に述べると、マイルスは一般人としてスパイダーマンに助けられた事があるから

 

 

 

 マイルスが本作で登場する他のスパイダーマンたちとは異なる点、もっと言うと、これまでのスパイダーマン映画に登場した3人のスパイダーマンたちとも異なる点です。スパイダーマンが既に存在している中で、マイルスは初めはヒーローでもなければ、スパイダーマンでもない、スパイダーマンに助けられた「一般市民」でした。実際にマイルスは本作の序盤にて、マイルスの世界のスパイダーマンことピーター・パーカーに助けられます。

 

スパイダーマンは多くの敵(ヴィラン)と戦う中で、幾千もの一般市民を助けます。しかし時に、スパイダーマンが助けている市民たちに逆に助けれられる事もあります。一方通行な関係ではなく、互いに助けているという相互関係がスパイダーマンと一般市民の間にはあります。

 

スパイダーマンのスイングシーン(糸を使って街中を飛び回るシーン)は、そんなスパイダーマンと一般市民の関係の象徴であるといえます。スパイダーマンは糸を使う事ができますが、糸だけでは空を駆ける事はできません。糸を接着する、即ちスイングにおける支点となり得る建物があるからこそ、スパイダーマンは力を最大限に発揮する事ができます。そしてその建物は一般市民の人々たちが作った物であり、まさに人々を助けるスパイダーマンの事を、人々もまた支えている事を象徴しています。

 

 

 

 スパイダーマンとは別に空を駆けるヒーロー、アイアンマンがいます。アイアンマンの場合はスーツの全て、即ち能力の全てを自分の手で作ります。2017年に公開された『スパイダーマン:ホームカミング』の予告編にて、スパイダーマンとアイアンマンが並んで街中を飛んでいるシーンがあります。(本編で使用されてません。)並んで飛んでいても、スパイダーマンの「飛ぶ」とアイアンマンの「飛ぶ」は違います。自前の能力で飛行を実現しているアイアンマンに対して、スパイダーマンは建物つまりは人々に支えられて飛行を実現しているんです。

 

Spider-Man Homecoming [4K Ultra HD](Import)

 

2012年に公開された『アメイジングスパイダーマン』では、こんなエピソードがあります。リザードマンの企みを阻止する為にオズコープ社へ向かうスパイダーマン、負傷した足のせいで早く移動する事ができません。そんな中助けてくれたのが、スパイダーマンに助けてもらった子供の父親であるクレーン技師の男。彼は仲間を集めて、オズコープ社に続く道に糸を接着できるクレーンを設置しました。そのおかげでスパイダーマンはオズコープ社へ急いで向かう事ができました。このエピソードは上記で述べたような「人々を助けているスパイダーマンは、同時に人々に助けられている。」そんな互いを支え合う関係性を象徴しています。

 

 

 

 本作『スパイダーマン:スパイダーバース』は、スパイダーマンに助けられた市民がスパイダーマンになる物語です。『アメイジングスパイダーマン』で助けられた市民がスパイダーマンを助けたみたいに、マイルスもまた、スパイダーマンに助けられた市民として、死んでしまったスパイダーマンが阻止しようとした敵の野望を阻止した。

 

本作の一つのテーマである「誰でもスパイダーマンになれる」。初めは「一般市民」であったマイルスがスパイダーマンになり街中をスイングする事で、他のスパイダーマンたちがスイングした時以上に、そのテーマを実感させられます。

 

だからこそ、マイルスが覚醒し、一度は落ちてしまった場所を飛び越え、街中を糸でスイングし飛び回る姿に、私は心を震わされ涙を流したんです。本作は一見スパイダーマン誕生を描いた作品でありながらも、その実、「一般市民」の立場であったマイルスがスパイダーマンになる姿を通じて、スパイダーマンと一般市民の関係性にまで踏み込みスパイダーマンという存在を定義しました。マイルスのコミックが先輩スパイダーマンたちのコミックと並んだように、本作もまた、私が観てきたスパイダーマン映画と並んで、永遠に心に残り続けるでしょう。

 

Spider-Man Into the Spider-Verse 2019 Calendar