モリオの不定期なblog

映画・特撮・アニメの感想や思った事を書きます。宜しくお願いします。

臨場感とは、見辛さにあり。パシフィック・リム一作目と二作目の違い。

  一つの作品を何度も鑑賞する理由は様々だと思います。この作品の映像が好きだったり、ストーリーが好きなど。『ウルトラマンジード』第11話の場合、とあるシーンの映像が本当に好きなんですよね。画面手前では建物の上でライハが、その奥ではウルトラマンジードが同時に戦っているシーン。

 

「あれ?サムネイルにしておきながらパシフィック・リムの話じゃないのかよ。」と思われた方もいるでしょう。安心してください、後で話します。

 

「腕を大きく横に振るだけで、ぶつかってしまいそう。」そう感じるくらい建物に近い場所で戦闘を繰り広げるジードとペダニウムゼットン。建物の屋上からの視点で見せられるウルトラマンと怪獣は、近すぎるが故に全体像が見辛い。ウルトラマンと怪獣が画面に収まらず今にも建物にぶつかってしまいそうな感じ。このシーンには凄く臨場感がありました。

 

 

 このシーンを観て「臨場感は見辛さを感じる事で生まれるのかな。」と初めて思いました。

 

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 『パシフィック・リム』はカルト的な人気を誇っており、私も公開当時、映画館で鑑賞し熱狂しました。作品に大いに熱中する一方で、作品の数少ない欠点と感じていた部分が「見辛さ」です。戦闘シーンは基本的に夜で、加えて雨が降っていたり海の中であったりなど、観客にとって決して見やすいシチュエーションではありませんでした。

 

パシフィック・リム』は、日本のアニメや特撮ライクなデザインのロボットと怪獣が、ハリウッドのハイクオリティなCGで表現されるという、日本のアニメ特撮のファンにとっては夢のような映画です。「もっとじっくり観たい。」という気持ち故に、見辛さが余計に気になってしまったのかもしれません。

 

パシフィック・リム オリジナル・サウンドトラック

 

 しかし本作にこれほど没入する事ができたのは、その「見辛さ」にこそ理由があるのではないかと思いました。ロボットや怪獣の動きが少し見辛いと感じさせる程の画面の情報量が、スクリーンの中の環境を観客が認識させる。結果として、その場に自分がいるかのように感じます。

 

 

 二作目の満足感を損なっていた要素は、「見辛さ」にあったのではないかと今は思っています。逆に、動きが一作目と比べてスピーディーになった事などは個人的にマイナスポイントではないんです。ウルトラマンなど特撮作品、特に映画作品でよく見られる「変身バンクカット現象」が好きなんですよね。

 

テレビシリーズで毎回じっくりと見せていた変身バンクが劇場版では基本カットされている事がよくあります。変身バンクをテレビシリーズでは毎回じっくり見ていた前提があるからこそ、スピード感を重視した変身(タイプチェンジ)と必殺技に特別感を感じる。

 

パシフィック・リム』でも同様で、一作目ではエルボーロケットを溜めて見せていたのに対して、二作目では溜めなくスピード重視で見せる。一作目では溜めて打つまでに長い時間がかかっていた事が嘘みたいに、二作目ではプラズマキャノンを連写したり、一連の動作の中で使用していました。この部分に関しては、前述した現象と同じように特別感を感じたので好きなんですよね。

 

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 では、一作目と違って二作目に熱狂できなかった理由は何なのかというと、先ほど述べた「見辛さ」なんです。一作目とは打って変わって、戦闘が行われるシチュエーションは昼であったり雨も降っておらず、また海の中でもありません。画面がスッキリしていてロボットと怪獣の姿がはっきりと視認できる。だからこそ観客である自分は、どこか一歩引いた視点で見ているように感じてしまう。二作目の鑑賞を経て「一作目の見辛さには意味があったんだ。」と思いました。結果として、一作目の数少ない欠点も解消され、一作目の評価は更に盤石なものとなりました。

 

 

 

 もちろん、必要以上に揺らしたりして認識困難なほど見辛くしてしまうと、臨場感以前の問題です。観客が状況を理解できるギリギリのラインで見辛さを演出し臨場感に繋げる。そのバランス調整は難しいと思います。しかしそのバランス調整が上手くいき、高いレベルの臨場感を演出できた作品が、一作目『パシフィック・リム』だったのではないかと思います。

 

 

 前述したスピード重視の描写、角ばったロボットデザイン、二作目にも好きな要素はあります。ですが、パシフィック・リムにおいて、一番大事な要素の一つだと思っている臨場感において、一作目が圧倒的だったと思います。

 

(3月22日(金)一部改稿)