モリオの不定期なblog

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NOMAN'S LANDに立つガンマンの一発が見逃せない<TRIGUN STAMPEDE トライガン・スタンピード 第一幕/感想>

 2023年1月現在、テレビ東京系列で毎週日曜日23時から放送または配信中のアニメーション作品『TRIGUN STAMPEDE』が最高です。アニメーション制作を担当しているオレンジは、『宝石の国』や『ゴジラS.P(シンギュラ・ポイント)』、『マジェスティックプリンス』、『BEASTARS』などを作ったCGアニメ会社であり、その魅力は何と言っても、手描きらしい表現とCGらしい表現を両立したCGアニメーションです。手描きにしか見えないというルックを目指していると言うよりは、3DCGならではの表現をベースにしながら、手描きのエッセンスを随所に入れていて、「これはCG・手描きっぽい」と感じる部分が明瞭であるのに、違和感なくアニメーションという一つの表現として成立しています。

 

そんなオレンジの新作である『TRIGUN STAMPEDE トライガン・スタンピード』は、これまでと同様に、手描きアニメ・CGアニメのそれぞれの特徴が有りながら、それぞれの表現を横断する気持ち良さを感じます。異なる表現手法・方法が融合している本作について、第一幕が終了した現時点で感じていること・考えていることを以下に書き残しておきたい。

 

trigun-anime.com

 

 

 

 夕陽をバックに荒地に立つただ1人のガンマンが、銃を掲げて一点を撃ち抜く。流動的でありながら一枚絵(ポーズ・構図)がキマっている映像。その動きを作り出すアニメーション、それを切り取るカメラの構図、その構図になるまでのカメラワーク、映像を構成する全ての要素が、手描きアニメっぽさやCGアニメっぽさを感じさせだかと思えば、実写映像っぽさも感じる。常に新しい視覚的な刺激をもたらす映像が素晴らしい。

 

そんな素晴らしいアニメーションの中で大立ち回りを演じていたのが、本作の主人公であり、「ヒューマノイドタイフーン(人間台風)」の異名で呼ばれているヴァッシュ・ザ・スタンピード。穏やかとは言い難い世界を旅するガンマンでありながら、戦うのは苦手と言いなかなか銃を抜かない平和主義者。そんな彼が見せる明るい笑顔や振る舞い、コミカルなリアクションはとても印象的で、「出来れば争いたくはないんだけど。」といった台詞は彼のそうした印象を強化する。だからこそ、いざという時に見せる流れるようなアクションの格好良さが際立つ。更に、ピンポイントで撃ち抜く活躍が、アクションシーンをピンポイントで差し込む作品の構成そのものに符合することで、作品全体のカタルシスに繋がっていく。

 

第1話 「NOMAN’S LAND」

 

そんなヴァッシュを取り巻く登場人物の存在が、ヴァッシュの存在感と本作の魅力を高めています。「ヒューマノイドタイフーン」を追う新人記者のメリル・ストライフと彼女の先輩記者であるロベルト・デニーロ。彼らの反応の一つ一つが、架空の世界のレギュラーとイレギュラーを教えてくれる。例えば、巨大生物が砂中から飛び出して空中の生物を捕食して再び潜っていく、なんて凄いことが自分たちのすぐ後ろで起こっていても、ロベルトはおろかメリルでさえも全く動じない。劇中で見せる2人のリアクションが、本作の世界観をグッと広くしてくれています。

 

決闘における相手の振る舞いに異を唱えるメリルに対しては、「恵まれた奴の意見」だとロベルトが諭す。新人特有の青臭さを感じさせるお嬢様気質なメリルと、酒を片手に仕事に取り組む達観したロベルト。そうした共通または異なる反応が、一筋縄ではないかない本作の世界の在り方を雄弁に語っており、第一幕では登場していなかったまだ見ぬ舞台への想像も膨らませられます。

 

「光よ、闇を照らせ」

 

「こう在りたい」理想と「こうせざるを得ない」現実を秤にかけた時の傾きが大きく感じられる世界。本作で印象的なのは、ヴァッシュに銃を向けることが本意ではない、戦わずに済むのなら戦わない人たちの姿です。そうした人たちがいるからこそ、人助けをしようとするヴァッシュの存在感が増していく。

 

それと同じく強調されるのが、人の命を奪うことに躊躇いを感じさせないミリオンズ・ナイヴズ。ヴァッシュの双子の兄である彼の存在は、ことの発端と思われる序盤の出来事や生体動力炉プラントに対して意識させ、この状況が単純なものではないと感じさせます。それらを踏まえると、暴力をやんわりと拒絶しながらも人を助けるためなら銃を抜くことを躊躇わないヴァッシュの在り方が、世界の謎・在り方に直結していくのではないかと予感させます。

 

第3話 「光よ、闇を照らせ」

(メインPVの時とは全く違って見える、「あまりにも…あまりにも…!」なカット。本作の複雑さを象徴しています。)

 

それが可視化している本作のビジュアルとアニメーションが、その魅力を加速させていきます。3DCGアニメ特有の長尺のカットによって、ヴァッシュの縦横無尽なアクションはもちろんのこと、ふとした瞬間の表情などが印象に残り、彼の過去や信念が垣間見えてきます。「こう在りたい」理想を許さない世界だからこそ、「こう在ろう」とするガンマンの姿にカタルシスが生まれ、彼が放つ一発の弾丸にこの上ない痛快さを感じます。

 

 

 

 原作の『トライガン』(マキシマムを含め)は、名前は知っていたのですが未読でした。本作を観ようと思ったのはオレンジのアニメーション目当てで、どう言った内容なのかはPVから把握できる情報のみ。殆どまっさらな状態で見始めましたが、第3話まで観終えた今、本作に完璧に魅了されています。NOMAN'S LANDに立つ一人のガンマンの物語がどのような結末を迎えるのか、その物語に二人の記者、そして十字架を背負った関西弁で話す葬儀屋がどう関わっていくのか、興味が尽きません。(あの十字架に!どんなからくりが仕込まれているのか!)

 


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