モリオの不定期なblog

映画・特撮・アニメの感想や思った事を書きます。宜しくお願いします。

異なる次元で「スパイダーマン」という同じ名を持つ者達の物語<スパイダーバース・感想・ネタバレ>

 3月8日(金)の公開に先駆けて、IMAX限定で先行公開された『スパイダーマン:スパイダーバース』。サム・ライミ版の『スパイダーマン』三作品以降、全てのスパイダーマン映画を観てきて、映画限定とはいえ、スパイダーマンに対する思い入れは非常に強いです。本作に対し、あまりの期待に胸を膨らませすぎた結果、公開前に記事を2つ書いてしまったほど。

 

mori2-motoa.hatenablog.com

mori2-motoa.hatenablog.com

 

スパイダーマン映画で初のCGアニメしかも題材は複数のスパイダーマンが登場する『スパイダーバース』です。そして、そんな今までにないアプローチのスパイダーマン映画に『レゴ・ムービー』の監督であるフィル・ロードとクリス・ミラーが製作の携わっている訳ですから、ただでさえ高い期待値はうなぎのぼり。これ程高い期待を久しぶりに感じながら、映画館に行ってまいりました。

 

スパイダーマン:スパイダーバース オリジナル・サウンドトラック

スパイダーマン:スパイダーバース オリジナル・サウンドトラック

スパイダーマン:スパイダーバース オリジナル・サウンドトラック

  • アーティスト: サントラ,ヴィンス・ステイプルズ,デイビット・ビラル,デンゼル・バプティスト,アンドレ・ジョーンズ,ダニエル・シーフ,ディディーアー・コーエン,トレバー・リッチ
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
  • 発売日: 2019/02/27
  • メディア: CD
  • この商品を含むブログを見る
 

 

 

(以下、映画本編のネタバレがあるのでご注意ください。) 

 

 

 

 

 本作は言ってしまえば、同じ力を持つ先輩たちに導かれながら成長する新米ヒーローの物語です。非常にシンプルでありながらも、作中で起こる出来事やキャラクター同士のやり取りの一つ一つが、中盤から終盤にかけての展開へ非常に丁寧に繋がっていきます。キャラクターたちが悩んでいたり考えている事から何気なく話していた事に到るまでの全てが、その大小を問わず、後の展開へと繋がっていく。

 

スパイダー・グウェンの友達にまつわる発言やスパイダーマンノワールルービックキューブの色に対する発言などを余す事なく終盤の展開に生かします。無駄な要素を感じさせない程の丁寧な伏線の回収に、時に爽快感を感じ、興奮し、感動させられます。

 

複数人のスパイダーマン同士のアンサンブルを楽しみながらも、「マイルス」という主人公に軸を置く事で、初見の方でも楽しめる構成になっている事も非常に良かった点です。学校や父親との関係、そして将来に対する迷いと、マイルスの持つ悩みが描写されます。スパイダーマンになり、そして覚醒するに到るまでの過程に、マイルス自身の生活や人生がしっかり反映されています。その描写の積み重ねが、スパイダーマンとして覚醒する下りに説得力とカタルシスを与えます。

 

また、映像的なカタルシスも非常に感じられます。ビルからビルに飛び移る事に一度は失敗するところを見せておいて、後に難なく成功し街を飛び回るところを見せる。マイルスの成長を映像で見れる事で、覚醒の説得力が更に増しています。

 

スパイダーマンが行うお決まりのような自己紹介もまた、マイルスの成長を一層引き立てます。それぞれのスパイダーマンのコミックの表紙から始まる紹介は、ヒーローとして既に経験を積んでいる先輩スパイダーマンたちの専売特許です。物語の終盤、成長を遂げたマイルスが、先輩たちと同じように自己紹介をしてコミックの表紙を飾ります。マイルスがスパイダーマンとして、ヒーローとして先輩たちと肩を並べられる存在になった事を実感させられます。

 

前述した通り、マイルスのスパイダーマンとしての成長を描くシンプルなストーリーでありながら、コミックや映画を何度も作られてきたスパイダーマン」というコンテンツだからこそ得られるカタルシスを本作では感じられました。

 

 

 

 スパイダーマン孤独な存在です。本作では、その事から彼らが別次元のスパイダーマンに会う事の意味が描かれています。

 

「一人じゃないって知れて良かった。」

 

決して共有する事のできなかった苦悩や思いを理解してもらえる存在に出会えた。別次元の存在だけど、いや寧ろ、別次元だからこそ同じ「スパイダーマン」という共通項を持った存在に各々が初めて会えた。

 

これまで『スパイダーマン』作品を観てきて第三者の視点なりにスパイダーマンの苦悩を感じ取ってきました。孤独に悩みながらも、最後まで世界で唯一のスパイダーマンとしてヴィラン(悪役)と戦い人々を救ってきました。恋人や親友に正体を知られたりする事はありますが、「同じスパイダーマン」として苦悩や葛藤を理解してくれる存在はいませんでした。現に本作で登場するグウェン・ステイシーは友達を作らないと打ち明けています。

 

そんな風に孤独に戦ってきたからこそ、今回の出会いが彼らにとってどれだけの喜びを与える出来事だったのか、想像に難くありません。これまで別の作品で、一つの映画では収まらないほどの物語をファンは観てきたからこそ、今回の彼らの出会いと別れに何重にも厚みを感じ涙する。

 

グウェンとマイルスの「友達になれる?」というやり取りを始めとするスパイダーマン達の会話は、本来あり得る事のなかった出会いのお陰で成せたもの。

 

ソニーが制作のスパイダーマンは、この十数年間で現在進行のも含め3度作り直されています。迷走ともとれる、3度のリブートは本作において大きな意味が与えられたと感じられました。

 

 

 

物語の終盤、それぞれが別れの挨拶を述べる中で全員が「別次元のスパイダーマンに出会えた事実」を噛みしめている。苦悩を一端でも知っている観客だからこそ、そのスパイダーマン達の姿に涙します。

 

その中で、先輩であるピーターから受け取った物をキャッチボールを返すかのように、教えの一つ一つを目の前で実践するマイルス。口元ではなく手元を見たり、足払いでバランスを崩し胸元を掴む。

 

「Leap of faith(信じて跳べ)」

 

この言葉をピーターに言われたマイルスが、ピーターに同じ言葉を投げかけて元の世界へ送り出す。またピーターも、マイルスを信じ自分の世界へ戻っていく。

 

そしてマイルスが最後、一人でキングピンの野望を阻止しました。最後の戦いでは涙が止まりませんでした。

 

 

 

 これまでのスパイダーマン映画と同じようなシンプルな誕生物語に、「スパイダーマン」というコンテンツの力と積み重ねを最大限に生かしたと感じれられる傑作でした。小学生の頃から『スパイダーマン』の映画を観てきてよかったです。個人的に本作は、スパイダーマン最高傑作というよりは、スパイダーマンの集大成という感じでした。