モリオの不定期なblog

映画・特撮・アニメの感想や思った事を書きます。宜しくお願いします。

ガンダムの●●化により紡がれた本作の見事な結末、「待ち合わせ」に込められた願いと希望<ガンダムNT(ナラティブ)・考察・ネタバレ>

 

 本作は、90分という上映時間で主人公達の物語を描きながらニュータイプの一つの結論を提示した事が非常に素晴らしいです。前回の投稿では、これまで宇宙世紀ガンダムを観てきたファン、本作で初めて宇宙世紀ガンダムを観る人の両方が楽しめる作品になっていると述べました。

 

mori2-motoa.hatenablog.com

 

今回は、ガンダムの擬人化によりニュータイプの話と主人公のヨナ達の話の二つの話を結びつけ90分という短い上映時間の中で描いた事、加えて本作の結末で描かれた事について考えてみようと思います。

 

narrative/NOISEofRAIN(期間生産限定アニメ盤)(特典なし)

 

 

(以下、映画本編のネタバレがあるのでご注意ください。)

 

 

 

 

 事前情報にて本作ではこれまでシリーズ通して描かれてきたニュータイプに一つの結論が描かれる事が明かされてます。ですが上映時間は90分、新たな登場人物の物語を描く事と同時に行うと尺が足りないのではという不安が付きまといます。戦闘シーンだけでも楽しめればと鑑賞前は考えてましたが、その不安は杞憂でした。

本作の最大のポイントはガンダムの擬人化」。それによってニュータイプを描くだけでなく一つの作品としてシリーズ初見の観客も楽しむ事のできる作品になっていました。

HGUC 機動戦士ガンダムNT ユニコーンガンダム3号機 フェネクス (デストロイモード) (ナラティブVer.) 1/144スケール 色分け済みプラモデル

 

 

 物語の中でリタ=フェネクスガンダムである事が明らかにされます。サイコフレーム製のフェネクスに同化したリタは「人類が扱う事のできない技術」のメタファーであり、ヨナはサイコフレームを扱う事の出来ない「ニュータイプではない人類」の象徴であると考えられます。つまり、リタとヨナの関係はそのままニュータイプと人類の関係に置き換える事が出来る為、キャラクターの物語を追うだけで初見の人でもニュータイプについてある程度理解する事が可能となっています。

 

 

 

機動戦士ガンダムNT オリジナル・サウンドトラック(特典なし)

 劇中ではニュータイプの存在は本質まで考えられず否定されてしまいます。しかしそれは「現在」の話であり、その先の「未来」でニュータイプが受け入れられる可能性まで否定したわけではありません。

 

本作の結末を一言で表すと、「待ち合わせ」ニュータイプ(リタ)が今居る場所から遠い場所に先に行き、人類(ヨナ)を待っている。今すぐは不可能でも、「いつか」人類がその遠い場所へ辿り着く、その事に対する願いと希望が本作の結末に込められている。

これが実に鮮やかで素晴らしい。ヨナとリタ、ミシェルへ最後に訪れる別れからは「悲しみ」が生まれる。しかしそれは同時に、再開からは「喜び」が生まれる事も意味します。

本作の最後に描かれる事は別れです。しかし同時に「いつか」再開する事を予感させ「喜び」も示唆しています。劇中の言葉を借りるなら、「喜びと悲しみは一緒」です。

加えて「リタ=フェネクス」である事により、ヨナ達にとってだけでなくニュータイプに対する未来の可能性も示しました。

ニュータイプの居る場所へ、ヨナが自力で、もしくは人類が皆で辿り着くのかは分かりません。いずれにせよ、ヨナ個人、人類全体のどちらにも、願いと希望を持たせる結末になっています。

そんな本作の結末に非常に感動しました。

 

 

 宇宙世紀ガンダムシリーズの特徴的な設定を持ちながらも、単独で語る事のできる物語の魅力も打ち出し、その物語をニュータイプという特殊な設定を語る事へも繋げる。鑑賞前に感じていた不安を払拭するどころか、シリーズのファンも初見の人も楽しめる作品になっていた事に非常に驚きました。

近年は、昔から続く様々な作品がリメイクやリブートに苦戦する中で、本作はこれまでのシリーズを踏まえながらも初見の人も楽しめる一つの作品に作り上げる事に成功していると言えます。それを可能にしたのがガンダムの擬人化」であるから、更に驚きです。

 

 本作の最後にヨナが希望を持つ姿を描く事で、三人の物語だけでなくニュータイプに対する一つの結論を、シンプルにかつ同時に描いてます。それにより90分という短い時間でも、これほどボリュームのある物語を見事に描かれています。

こんなネタバレの記事を書いておきながら何ですが、シリーズ未見の人にも是非観て欲しい。そう思わせるだけ一つの作品としてのパワーを持った素晴らしい作品だと私は思います。