アニメ『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』から約4年、その続編で完全新作の劇場版『機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)』がついに公開されました。ユニコーンを全章鑑賞した身として絶対に外せない一作であり、発表当初から必ず観たいと考えておりました。
やはり気になる点は、「ニュータイプ」の存在が本作でどのように描かれるのかという点、ユニコーンの続編でありながら新しい登場人物を据えた事でどのような物語が紡がれるのかという点です。この2点に注目して初日に鑑賞してまいりました。
(以下、映画本編のネタバレがあるのでご注意ください。)
本作は宇宙世紀のガンダムを見てきたファンと本作で初めてガンダムを観る人、どちらも楽しめる作品になっており素晴らしいと思いました。戦闘シーンに関しては、90分という短い上映時間に多くの戦闘シーンを盛り込みかつ一つ一つの戦闘シーンがスピーディーで満足度が高いものになっていました。一つ一つの動きを丁寧に描写していた前作ユニコーンとは異なり、速さを重視した戦闘シーンで前作とは違った形で非常に見応えがありました。
そして話は、ニュータイプではない人間を主人公にして構成も非常にシンプルにした事でファンにとっても初見の人にとっても見応えがあると同時に見やすい話になっています。それぞれの視点から考えてみたいと思います。
あらすじ|『機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)』公式サイトより引用
これまで宇宙世紀の物語において大きな要素であったニュータイプ、それに対する答えが本作では提示されニュータイプに纏わる物語の一つの決着として楽しむ事ができます。
これまでの作品で主人公の多くはニュータイプであり、彼らの物語を通じてニュータイプの存在が描かれてきました。それを経て本作では、ニュータイプに対する一般人の見方、考え方が描かれています。同時に「フェネクス」という機体、「リタ」という少女を通じてニュータイプの行き着く先や正体が描かれています。そうした上で、ニュータイプに対する一つの回答が提示されます。
加えて、過去のモビルスーツや登場人物も登場して知っていれば知っているほど楽しめる作りにもなっています。ユニコーンの続編として、宇宙世紀の一つの総決算として、ファンにとって見応えのある内容になっているのではないかと思います。
あらすじ|『機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)』公式サイトより引用
・ガンダムを初めて鑑賞する人にとって
ニュータイプではない青年「ヨナ」を主人公にする事で、ニュータイプをめぐる争いによって離れ離れになってしまった幼馴染の少女「リタ」を取り戻そうとする普遍的な物語として楽しむ事ができます。ニュータイプやサイコフレームを舞台装置として捉える事で、フェネクスをめぐる争いの中で一つの目的を果たそうとするヨナの物語として見応えがあります。
加えて、ヨナがリタを追う構図をナラティブガンダムがフェネクスを追う構図に重ねる事で映像と物語が繋がり本当に見やすかったです。迫力の映像を楽しむながらも、混乱することなく物語を追いかける事ができる作りになっています。
あらすじ|『機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)』公式サイトより引用
本作は、新しい登場人物をメインに据えてニュータイプに対する一つの結論を出す事でニュータイプの総決算的な位置付けになると同時にガンダムを初めて観る人にとっても十分に楽しむ事ができる作品になっていると思いました。以前からファンである人にとってはシリーズの「まとめ」に、初めて観る人にとってはシリーズの「入口」になりうる作品として完成度の高い映画だと思いました。
勿論、ニュータイプの定義が不明確であったからこそ魅力に感じ本作のニュータイプの描写に対して不満に感じている方もいると思います。しかし私にとっては、ニュータイプという存在を明確にし登場人物の普遍的な物語に上手く組み込んで初見の方でも十分に楽しめるエンターテインメントにした事が非常に評価できます。
ニュータイプの話と主人公達の物語をうまく融合させ描きながらも、戦闘シーンを多く盛り込み90分という短い時間にまとめ描き切った事が私は素晴らしいと思いました。ヨナやリタ、ミシェルの幼馴染三人の話をもっと観たかったという思いはあるものの、戦闘シーンに興奮し物語に感動し大変満足しました。
今後も宇宙世紀の作品が制作される事が発表されています。今後の展開が非常に楽しみです。