モリオの不定期なblog

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ラストのハルオの選択の意味とは?その選択に込められた本作のメッセージとは?<アニゴジ最終章・考察>

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<最終章>星を喰う者 - GALLERY|<全三部作:最終章>アニメーション映画『GODZILLA 星を喰う者』OFFICIAL SITE

より引用

 

 前回の感想で、本編のラストのハルオの行動について触れました。ハルオがゴジラに特攻し命を断つ事で人類とゴジラの戦いに終止符を打ったと述べました。しかしハルオは人らしく在る事、人としての尊厳を守る事を最も貫こうとしていました。そんなハルオがなぜ、ゴジラと戦い続ける事ではなく、戦いに終止符を打つ事を選択したのでしょうか?今回は、それについて考察し本作に込められたメッセージを考えようと思います。

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<最終章>星を喰う者 - GALLERY|<全三部作:最終章>アニメーション映画『GODZILLA 星を喰う者』OFFICIAL SITE

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そもそも何故、ハルオはギドラを拒んだのでしょうか?最後の瞬間のハルオの表情から読み取れるように、少なくとも自身が解放される事を望んでいたのは間違いないと考えられます。ではハルオにとってギドラによる死とゴジラへの特攻による死の違いは何だったのでしょうか?ギドラがもたらす物は、ハルオだけでなく人類全ての死です。メトフィエスは、永遠の存在しないこの世界において高次元の存在であるギドラによる死は最も華々しくかつ幸福な終焉だと考えています。対して自らの特攻がもたらす物は、人類の存続です。人間とゴジラの間にある火種を完全に消す事で元の人類の在り方に戻る事は叶わなくなりますが、人類は存続する事ができます。

 ギドラを受け入れれば、人類の罪の象徴であるゴジラを人類諸共消し去る事が出来ます。しかしその選択は人類の行なってきた事から目を逸らすだけでなく人類の歩みそのものを否定する行為であり共に戦ってきた仲間たちへの裏切りになります。彼等へ報いる為にゴジラを受け入れた上で生き残り命を繋いでいく、両親が自分の名前に託した想いのように、生き残りいつか訪れる「春」へ繋げる事がハルオに出来る最善の行いだったのではないでしょうか。

 滅亡は一旦は免れましたが、ゴジラと戦い続ければギドラがいずれ再来する可能性は残されています。未来永劫ギドラの襲来を防ぐには、ゴジラに対する強い怒りと絶望を断ち切らないといけません。ハルオが去る際のミアナとのやりとりで、ミアナはゴジラは怒りの対象ではなく台風など自然災害と同じものであると言います。ハルオがフツアと共生すれば、フツアがゴジラに対するハルオの怒りを理解してしまう可能性があります。そうなればゴジラと人類の戦いは続き最終的にギドラを呼び寄せてしまいます。

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 両親から自分の名前に託された思いとマイナとミアナから教えられた命を繋ぐ事、これらが揃った時にハルオの思いは決まったのではないかと思います。人類の戦う意思と手段を今のうちにこの世から消し去る為に、ハルオはゴジラに特攻を行ったと考えられます。ゴジラへ特攻を行う時にハルオがゴジラへ向けて発した言葉には、人類とゴジラの戦いの終焉、人類の存続への思いが込められていたのだと思いました。

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 人類存続のため命を捨てた事、そして命を散らす瞬間に穏やかな表情をしていた事、特攻という選択でしか本当にハルオは救われなかったのかと考えてしまいます。そもそもゴジラを生み出してしまったのはハルオよりも前の世代です。アニメ版『ゴジラ』は初代ゴジラのテーマと共通する部分を持ちながらも初代ゴジラには無かった「大きなツケを払わされる世代の物語」を描いています。ゴジラ誕生から半世紀以上経ち、現在はエンターテインメントとしてゴジラが認識されています。だからこそ、改めてゴジラが最初に生まれた意味を認識する為のきっかけとして、意義のある作品ではないかと思います。エンターテインメントとしてのゴジラではなく、メッセージを伝えるためのゴジラとして、アニメ版『ゴジラ』を観る事ができて本当に良かったです。